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新エネルギーによって発電された電気を本格的に供給するには、それらが生み出した電力を日本の送配電網の中に組み込んでいかねばならない。
日本では海辺などの人口の希薄な土地に風力発電に適した風のよく吹く場所が多い。
日本人は風の弱い場所に町や農地を作ってきたからだ。
太陽光発電も小規模な発電機と送電網を結ばなければならない。
資源エネルギー庁はこの送配電網を新エネルギー発電対応のために作り変える費用を「全国で一三○○億〜六○○○億円程度」(新エネルギー開発課)により日々発電コストが下がる傾向にあることも強調する必要がある。
二○○三年に、米国の風がよく吹く場所では、風力発電のコストは同四円三セント)程度で発電できる例もあった。
また、風力発電に使うタービンの性能が向上すれば同二円程度(一,二セント)のコストも可能と予測されている(注四)。
と予想している。
ただ、電力会社の送配電技術の担当者は「その見通しは楽観的でしょう。
一社当たり数千億円、全国で兆円単位の費用が必要ではないか」と語る。
二○○三年から資源エネルギー庁は送配電系統問題について意見を集約している。
電力自由化の中で、電力会社側もコストを強調するようになった。
こうした中で、新エネルギーについて、電力会社は消極的な構えを本音ではみせる。
ある電力会社の中堅幹部は個人的な見解とした上で、「自由化が進んでいるこの時期に、会社の根幹である送配電網をいじることなどできません。
新エネは長期的には大切ですが、目先の会社の経営も考えなければ」とRPS法による一段の負担増には慎重だ。
一方、このような国の政策や電力会社の態度に批判的な見方もある。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也代表はRPS法について、「このままでは日本での新エネルギーの普及が遅れる」と警告する。
二○一○年までに英国とドイツは電源の一○%を新エネルギーにする目標を定めている。
「日本の場合は、国の目標も、RPS法の義務の割合も小さすぎます。
拡大の目標ではなく、逆に拡大を抑制する目標になっています」という。
送配電網に流れる電力の安定化を理由にして、電力会社は新エネルギーの発電の買い取り総量を限定している。
日本の電力会社はこれまで、停電をほとんど起こさない「安定供給」を事業の課題にしてきた。
これが新エネルギーでも抑制の理由に使われている。
飯田氏らは各地で市民の出資による風力発電事業を行っている。
各地で事業調査を行い、買い手となる電力会社に提案すると、「そこには送電線が通っていません」、「買い取る枠がありません」と消極的な答えが必ず返ってくるという。
「北欧やドイツでは、持続可能な発展をするとの社会合意があり、その手段として新エネルギーを選択しています。
日本の場合、そういう『哲学』がRPS法にありません。
推進役を担うべき政府や電力会社側にもなく、仕方なしに行っているとの姿勢が明白です。
この違いが大きい」と飯田氏は指摘する。
政府と電力会社は新エネルギーの導入に努力していることを強調する。
一方で研究者らの見方は批判的だ。
もちろん、安いコストの電力が、負担なく既存の送配電網を流れれば、電力会社も新エネルギーにもっと積極的になるはずだ。
この態度の差は「コスト」をどのように判断するかで分かれているようだ。
このような状況を前提にして、代表的な新エネルギーを眺めてみる。
風力と太陽光という代表的な自然エネルギー発電、廃棄物発電、水素燃料電池について、現状はどのようになっているのか、専門家に期待と問題点を聞いた。
東京湾から吹く心地よい春風に、白い羽がゆっくりと回る。
東京・お台場沖の埋立地で二○○三年三月から稼働している東京臨海風力発電所を開所直後に訪ねた。
二基の風車の愛称は「東京風ぐるま」。
この日は快晴で、陽光の下で、白くそびえ立つ美しい風車の姿が青空に映える。
一基の出力は八五○キロワット。
二基で年間約八○○世帯の電力をまかなえる。
現在、一基当たり二○○○キロワット近い発電能力を持つ大型の風力発電施設が登場しているため、「風ぐるま」は小型だ。
それでも、回転する羽の直径は五二メートル、地上から羽の頂点までは七○メートルもある。
三枚の羽が回転する姿は壮観だ。
事業は電源開発と豊田通商によって行われている。
そして東京都が土地を提供した。
「風ぐるま」は羽田空港に離発着する飛行機や、行楽スポットのパレットタウンの大観覧車からみえる位置にあり、「広告塔」の役目も担っている。
電源開発は国策の電力会社だったが、二○○三年一○月から法的に民営化された。
収益の拡大を狙う中で、新エネルギーによる発電は有望な新規事業分野だ。
「風ぐるま」の東京電力への売電価格は一キロワット当たり約二円。
「お台場沖の風の状況は必ずしも発電に最適というわけではありませんが、少しは利益が出ます」と電源開発の三保谷明氏は語る。
世界的にみて風力発電の増加は著しい。
全米風力発電協会の調査では、二○○二年末の風力の発電量は全世界で三三一万八○○○キロワット。
二○○一年に対前年比三八%増、二○○二年に同二八%増となった。
一九九四年は三一七万キロワットだったため、一○倍近い拡大だ。
石油代替エネルギーの模索の中で、欧州を中心に伸びた。
二○○二年一位のドイツは三○○万キロワット。
日本は第一○位の四一万五○○○キロワットだ。
第四位のデンマーク三八八万キロワット)では総発電量の一四%が風力発電になった。
風車が回転することで生じる騒音や発電の不安定さも、技術革新で対応できるようになった。
デンマークは人口五五○万人の小国で日本と単純に比較はできないが、この急拡大の背景には作ればもうかったとの事情があったようだ。
電力会社には自然エネルギーにより作られた電気の買い取り義務があり、投資や利益へ税制上の優遇措置が設けられた。
その結果、風力発電が魅力的な投資対象となった。
現在稼働する三○○○基の風力発電用風車のうち、個人や組合が八割を建設した。
日本の風車数は二○○三年三月に六○○基程度だ。
日本でも市民が集まって資金を出し、風力発電事業を運営する動きが始まった。
二○○一年九月に北海道グリーンファンド(札幌市)によって、日本で初めての市民組合による発電用風車「はまかぜちゃん」が浜頓別町で稼働した。
自然エネルギー市民ファンド(東京)は市民から集めた資金を各地の風力発電所に出資する運動を行っている。
大分県の別府湾に面した立命館アジア太平洋大学では、学生らが「十文字原ナウシカプロジェクト」という風力発電事業を起業した。
立地場所と宮崎駿氏のアニメ作品「風の谷のナウシカ」にちなんだ命名だ(注一)。
NGOなどのアドバイザーを務める東北大学の長谷川公一教授(環境社会学)は、市民風車運動の意義について次のように語る。
「従来、市民はエネルギー面で『受動的消費者』、『批判者』という立場でした。
ですが、この風力発電事業への参加運動は、起業、出資、運営という形でエネルギーを作ることに市民が主体的にかかわります。
これまでの姿が変わります」。
さらに、原子力発電所など巨大電力会社の施設は安全確保の必要性のためとはいえ、閉鎖的で不透明な要素が強い。
一方、風車は受益者の市民からみえるものだ。
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